手術直前の腰椎間板ヘルニア(37歳男性の治療例)

10月25日朝。
ハードな出張研修が終了したその翌日から腰の激痛としびれで立てなくなってしまった。Aクリニックに入院、治療、しかし1ヶ月過ぎてもなかなか良くならないので12月6日に手術決定していた。ところが手術予定の3日前に寝返りができるようになり痛みも軽減してきたので「手術しません。このまま様子を見ます。」と宣言して退院してしまった。その後10日間はロキソニンで痛みを止めながら過ごしてきたが、知り合いの紹介で「何とかしてください」と来院。

初診  12月19日(土曜日)

妻に付き添われて来院。ゆっくりと歩きながら入室。左足がしびれて左大腿部概則から下腿にかけて痛む。特に座位からの立ち上がりの時が激痛。座位のまま治療、少し軽くなって帰った。 

20日(日曜日)
座位のまま治療、激痛は出ないが歩行時が怖い。
21日(月曜日)
座位のまま治療 立ち上がりが楽になった
22日(火曜日)
杖を突きながら一人で来院、大腿・下腿部・ふくらはぎの痛みは消失していた。足先のしびれは減っているがまだあるという。座位のまま治療 
24日(木曜日)
良好だが歩くのがまだ怖い。 
26日(土曜日)
まだ杖は離せない。痛みなく50メートルくらいは歩けるがそれ位で左ふくらはぎに痛みが走り始めるのでまだ怖い。
29日  
家の中は杖をつかないで歩ける。
31日  
杖を突きながらも歩行訓練を始めている。
1月4日 
仕事始め。杖はまだ離せない。
7日 
仕事の遅れを取り戻すため動き回り、左臀部太腿、ふくらはぎにツッパリが出た。
12日 
足しびれはあるが、痛みなどはなく仕事できた。
16日 
しびれがなくなった。ふくらはぎのツッパリ感がある。
17日(日曜日) 
家でゆっくりできた。
19日 
普段不愛想で無口な患者だが「昨日今日と今までで一番調子がいい。仕事も普通にこなせるようになった」と多弁である。なかなか調子がいい。1ヶ月14回の治療で手術前のヘルニアがほとんどよくなったのだから上出来ではないか。「ここまでくるとあとはどんどん良くなっていくでしょう。1週間あけましょう。」というと、やっと「ありがとうございます」とだけ言って帰って行った。しかし「おかげさま」の言葉はまだ出ない。

以下、文責スタッフです。
脈診流経絡治療の第一人者である東洋はり医学会の福島弘道先生の逸話です。
2回目の治療にやってきたとある患者さん、具合の悪さを訴えます。福島先生は尋ねられました、前回は違う箇所の不調を訴えておられたが、それはどうなりましたか?と。それは治っています、今日は違うところが痛いです、と患者さんは答えました。福島先生は言われたそうです、あなた、伊勢丹の7階に「おかげさまで」と書かれた掛け軸が売っている、今すぐにそれを買ってきなさい、と。その掛け軸を毎朝おがみなさい、と。
これは患者がいかに治って当たり前と思っているかということへの苦言を呈したエピソードのようですね。前回の不調は治っているのです、でもなぜそれが治ったか、ということは喉元過ぎれば、で忘れてしまっているのです。
これは別に治療家に対して感謝をしろ、ということではなく、どういうプロセスを経て治ったのか、といことをきちんと把握しておくことは患者のためにもなる、ということです。どんな不具合をどのような治療で治してもらったのか、ということがわかっていれば、同じような不具合が起きた場合に対処できるわけですから。ちゃんと治してくれる術を求めることが出来るわけですから。
おかげさまで、という言葉は、何が功を奏したのか、ということを実感できた時にこそ出る言葉だと思います。

在りし日の福島弘道先生と内弟子として修行中の葛野玄庵
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