詳説:軽いギックリ腰〜痛みは軽いが座位のままで

これ↓の続き
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治療家の先生方には釈迦に説法となることも多いかと思いますが、スピンオフ企画として生温かく見守ってやってください。素人の私がひっかかったとこ、わかりにくかったとこ、重箱の隅をつつきます。

痛みは軽いが座位のままで

氣鍼医術は座位での治療が多いです。特に腰に痛みのある方は、いったん寝たら起き上がれなくなる恐れがあるので最初から最後まで座位での治療となることもあります。「痛みは軽い」の「」が意味するところは、重篤な腰痛のときばかり座位でするわけではない、の意だと思います。特に偏り病症のある方は、まず子午診断から始めることが多いので、当然、座位となります。

ベッドに座っていただき痛みの動作を確認する。

患者さんの主訴を鵜呑みにしては、治すべき箇所を看過してしまうこともあります。痛みの場所をしっかりと確認するためにも座位から始めます。結髪、結帯、内旋、前屈、そらし、などでどの経絡に痛みがあるかを探します。治療前と治療後の変化をわかっていただくためにも必要な工程です。
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右帯脈(胆経)あたりに対し右の通里で脉締した。ということは、この患者さんの痛みは虚痛である。

痛みのある右腰部を胆経と判断、胆経の子午拮抗経絡は心経。子午診断では郄穴か絡穴、原穴を使用します。今回は心経の絡穴である通里を用いています。本来は左右反対側となりますが、多分、左の通里で脉締しなかったため右の通里となったのでしょう。もちろん左右をみて脉が締まらなければ、他のツボ、他の経絡も試す必要があります。
※脉締とは何か、についての説明にはかなりの字数を要しますので、折を見て項を改めます。
子午は効かないということがありません。脉締を得られるまで、探します。どうにも定めにくい場合は、押手が悪いのです。穴を変える前に押手を見直すことが有効であることが多いです。ここで早々に脉締の場所を見つけることをあきらめてしまうと、子午は効かない、という間違った思い込みとなってしまうのです。大切なことは2回いいます、子午は効かないということがありません

正中線をはさんで反対側が拮抗経絡ですが、今回は右の胆経に対して、同じく右の心経で脉締しました。つまり同側子午です。この同側子午の存在を明らかにしたことも氣鍼医術の功績です。同側の場合は患部は実痛ではなく虚痛です。従来の経絡治療では子午鍼法は補法と瀉法、両方の使われ方をしていましたが、同側子午により子午鍼法は補法に徹する、それによって「効かないことはない」と言い切れるほどの治療力を獲得したのです。左右をはっきりさせるのは、本治法において片方刺しが原則であるからです。

左臨泣―右合谷で脉締

子午診断は虚の経絡を特定するために用いますが、奇経診断では実経絡を特定します。胆経が実、心経が虚であると子午診断により判明しています。一番の実が胆、1番の虚が心です。この時点で、証は心虚と推察できます。胆経の八総穴は臨泣、臨泣の奇経グループには臨泣ー合谷、臨泣ー後谿、それぞれ同側と交差があります。磁石のNSをそれぞれに貼ってみて、一番脉締を得られる場所を探します。今回は左の臨泣にN、右の合谷にSを貼って脉締が得られました。


臨泣(胆経)が1番の実経絡、合谷(大腸経)が2番の実経絡とわかります。

心虚腎虚証右から合水穴

臨泣ー合谷であれば「心虚腎虚証」というのがお約束です。子午で心虚は確定しています。じゃあ腎虚ってどこから出てくるの?合谷は大腸経です、大腸の子午拮抗経絡は腎経だからです。合谷が2番手の実だから、腎経が2番手の虚となります。
1:右の心経を補う
2:右の肝経を補う(難経六十九難「虚すればまずその経を補い、次にその母を補う」、心経の母経は肝経だから)
3:左の腎経を補う
4:右の肺経を補う(腎経の母経は肺経だから、左ではないことに注意
※本治法は難経六十九難の重虚極補の相克調整であるため、かならず虚している側で終わります。
症状から合水穴を用いていますが、用穴も脉締をみて選んでいます。

ここまでのまとめ

1:患部が右胆経、子午拮抗経絡は心経
2:左ではなく右心経で脉締したので、実痛ではなく虚痛である
3:心虚と推察、胆経が実なので奇経は臨泣グループを用いる
4:臨泣(N)左ー合谷(S)右で脉締、大腸経が2番手の実となる
5:大腸経の拮抗経絡は腎、ゆえに腎経が2番手の虚となる
6:1番手の虚である心経の右合水穴を補う
7:心経の母経である肝経の右合水穴を補う
8:2番手の虚である腎経の左合水穴を補う
9:腎経の母経である肺経の合水穴を補う
ここでは省略されていますが、本治法が終わったあとは通常、陽経の処理として奇経(今回は臨泣と合谷)を埃を払うように軽く瀉します。

補的気鍼①~③の深さで施術する

氣鍼①は深さ0.06mm~0.09mm(まぶたの厚さ)、氣鍼②は深さ0.1mm~0.9mm(手掌・足底の厚さ)、氣鍼③は深さ1mm~2mm(真皮の厚さ)を思慮しながらの極浅刺です。患部は虚痛であったので、補的です。本治法が終わった後、違和感が取りきれていない場合に標治法が行われることが多いです。鍼の深度は後方深度検脉にて決定します。

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灸は督脈上の筋縮から腰兪まで絹糸灸を3壮づつ

通称「ナイトウ式」です。内臓の活性化、そして背筋が伸びます。バストアップ効果も報告されています。

以上です。

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