脉診流氣鍼医術〜鍼術指南極意

脉診流氣鍼医術〜鍼術指南極意

脉診流「氣鍼医術」〜鍼術指南極意
葛野玄庵 著

普及版
(旧:和綴じ版)

氣鍼医術臨床講座の教科書でもあります。

序に代えて〜藤原知博士

霧笛に噎び泣く、それでいてロマンの「氣」循る魅惑的な神戸の街、それも鍼灸臨床の現場からの魅惑的な鍼灸情報の発信である。

因みに、発信者は鼻下に髭を今様に蓄え古きに見えてモダンの「氣」薫る、気迫漲る鍼灸の求道者”葛野玄庵”その人である。

東洋医学の復権に寄せる竹山普民のパトスとロゴスを受け継ぎ、自らの臨床に深き思索を巡らせつつ、福島弘道・井上恵理の「経絡治療」の世界を継承発展させ、現代日本人に叶う独自の鍼灸世界の指南書、「脉診流氣鍼医術」の結実をみたのである。

ところで、日本の自然・風土に育てられ、民族と共に星霜の歴史を歩んできた東洋医学。日本人の人種的特質と疾病に関わる歴史的な蓄積をもつ東洋医学。この医学に刻された日本と日本人のDNAの刻印有る無しが、流布する鍼灸各派の”真贋”ないし”真偽”を判ずる鍵であり、玄庵の世界はこれに叶って”真”なるものである。

さて、今時の日本は如何にも棲みにくい。外的には、天変地異と異常気象、天・地・水と食の汚染など「疫礪の氣」に傷つけられ、内的には、情報・IT主導の”管理・格差社会”のなかで社会の歪みに傷ぶられ、社会の複合現象に曝されて「七情の氣」を病むを余儀なくされている。日本列島はさながら”総日本人総病人列島”の観を呈し、棲む人はみな「氣」を損じ「氣」を労して、”個体維持”はともかく”種族維持”さえも儘ならぬほどの苦悩を生きているのである。

「経に曰く、百病は気より生ず、喜んで心を傷るときはその氣散じ、腎氣乗ずる、怒って肝を傷る時はその氣のぼり、肺氣乗ず、憂えて肺を傷るときはその氣結ばれ、肝氣乗ず、恐れて腎を傷るときはその氣怯く、脾氣乗ず、暑きときは氣泄れ、寒きときは氣おさまる、もし恬憺、虚無、精神内に守れば病何によって生ぜん」(本郷正豊「鍼灸重宝記」)と説く。

「内傷」重視の東洋医学の出番である。別して葛野玄庵の「脉診流氣鍼医術」の出番である。

「微鍼を持って皮膚にやさしく語りかけるがごとく『極く浅く接触・刺入』して『氣』の補瀉を行い、病苦を除去する」を本旨とする「氣鍼医術」は、現代日本人の「氣」の盛衰を良く正すを得て病めるを治すと共に、未病をも治する。

かくして、誰もが理解して同一を実現しうる、”再現性”あるノウハウが盛られた、現代に叶う伝統的な”鍼灸指南”の一書「脉診流氣鍼医術」の折角の上梓に私の拙い序文をここに捧げて、同じ道を往く同志としての愛をこめて、心からの連帯の挨拶を贈るものである。

医学博士・元大阪市立大学医学部助教授 藤原 知 識

故・藤原知博士と葛野玄庵

第一章  はじめに

氣鍼医術の定義
氣鍼医術における言葉の定義
氣鍼医術概論 ―皮膚に語りかける「極浅刺」の世界―
「気鍼医術」―治療の概略―
「経絡と氣」の存在を実感できる臨床症例
「子午鍼法」の実例
「側頭部の激痛」
「右肩が痛くて挙がらない・・」
「奇経鍼法」の実例
「・・・背屈ができない」
「胆石疝痛」
「本治法」の実例
「B型肝炎」
「高齢出産直前の逆子」
鍼灸医術の根本思想
「経絡」
「氣血営衛」

第二章 氣鍼医術の診断術―診断の目的―

観見(かんけん)の診断術 脉診診断術
子午診断術・奇経診断術
腹氣鍼診断術     
選経選穴診断術
標治深度検脉診断術・月齢適応側診断法    
脉診診断術 氣鍼医術の脉状定義―    
六部定位脉診 脉診処と指の当て方―     
       浮・中・沈位の診処       
       六部における臓腑配当    
比較脉診              
脉状診               
標治深度検脉術           
後方標治深度検脉(写真)・伏臥標治深度検脉(写真)
諸脉形状の論(脉法手引き草)     
病脉の想像図①             
病脉の判別               
病脉の想像図②             
異常脉(怪脉)

第三章 氣鍼医術の基本

(1)基本手技
1 取穴の方法  
2 押し手    
3 刺し手 
4 刺鍼時の構え

(2)補瀉の手法―脉状に応ずる手法
1 氣鍼補法   
2 氣鍼瀉法  
虚性の邪・補中の瀉法     
難経七十難  難経七十一難 
生きて働いている経穴の重要性
要穴の部位と取り方 

第四章  氣鍼医術の治療法(1)

基本鍼法(1)「氣鍼」鍼法
    (2)「氣刺鍼」鍼法 
    (3)「空中氣鍼」鍼法 
標の治法 「子午鍼法」の実際
左右経絡の虚実判定に不可欠な子午鍼法  
同側子午鍼法            
子午鍼法の治療穴          
「奇経鍼法」の実際―経絡の虚実判定に不可欠な鍼法 
奇経八総穴の部位と取穴      
奇経鍼法の実例    

第五章 氣鍼医術の治療法(2)-「本の治法」脉診流の神髄

(1)「証」決定の法則 ―難経六十九難の法則―
難経六十九難の治療原則     
氣鍼医術におけるー六十九難の臨床的運用解釈―
氣鍼医術における「証」の基本型     

(2)「証」決定の方法 ―脉状診による判定―
 (ⅰ)証決定の第一段階(1) 腹氣鍼診断術®   
 腹部診断五穴              
 腹部診断五穴の部位と取り方       
 腹氣鍼診断における適応側判定穴     
 腹氣鍼における証の決定方法 ―代表例―  
 陰経瀉法の要注意点            
(ⅱ)証決定の第二段階 不問診断 複合診断術        
(ⅲ)証決定の第三段階―適応側の決定―
 (1)なぜ「片方刺し」なのか―片方刺し原則― 
 (2)適応側判定の方法―経絡経穴の左右の虚実判定の方法―
    ①子午診断術 による判定        
    ②奇経診断術による判定          
    ③腹氣鍼診断術による判定      
(ⅳ)証決定の第四段階 五行病証診断(取穴原則)―難経六十八難―
  (1)病症的性質(五行病証)
  (2)語源的意義    
井栄兪原経合の配穴(陰経)(鍼灸聚英)  
(ⅴ) 証決定の第五段階(最終判定)選経選穴診断術 
   総括 複合診断による治療の実例
実例:寒気・咽喉痛      
実例:腰椎椎間板ヘルニア 

第六章「氣鍼医術」実例集

実例1.  原因不明との診断を受けた病症    
実例2.  聴神経腫瘍          
実例3.  高齢出産の逆子          
実例4.  肺炎の高熱            
     「肺炎球菌ワクチン」について    
実例5.  胆管手術後の高熱        
実例6.   脳梗塞後の不整脈      
実例7.  原因不明の不整脈        
実例8.  虚血性心疾患「心虚肺腎実証」の治療 
実例8の「虚血性心疾患患者」の脉波・コロトコフ音記録計の脉電図
(脈波・コロトコフ音記録計parama-tech社製)
実例9.   腎臓結石の疝痛発作      
実例10. 腰椎椎間板ヘルニアの夜間激痛    
実例11. 頚椎捻挫の激痛          
実例12. 原因不明のめまい・ふらつき病症   
実例13. 胸椎椎間板ヘルニア         
実例14. 坐骨神経痛            
実例15.  風邪症状「のどの痛み、頭痛、微熱が取れない」 
実例16.   頭痛の子午鍼法          
実例17.  井木穴の瀉法 
「二日酔いでみぞおちがむかむかする。」       
「昨日から扁桃腺がはれて痛くてつばも飲めない。」  
実例18 肝臓・心臓疾患 飲食業手伝い 女性 45歳  
「γ―GTP/1456が1ヶ月半で89まで降下した女性」
実例19 腰椎椎間板ヘルニアの激痛

第七章 医論雑論

伝統鍼灸医術を受け継ぐということ  
医療過疎地に鍼灸術を!           
塾的卒後教育の必要性            
巧みの技-脉診力を磨く           
私の人生を変えた本、二冊          
病院内鍼灸院について            
西洋医学知識の桐箪笥保管論          
「科学的な」ということ           
つれづれなるままに             
誤治雑感                    
未病を治す鍼灸医術            
論より臨床事実

第八章 伝統鍼灸医術における基礎理論

脉診流「氣鍼医術」の解説にかえて
神戸はり医術研究会理事  南 喜雄

あとがき

恩師・福島弘道先生(お写真)

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