ドライニードリングとならぬために〜武田洋樹先生

数あるブログの中から当”氣鍼医術症例ブログ”をご訪問くださりありがとうございます。

6月4日〜6日に全日本鍼灸学会主催の学術大会が開催されていました。多岐にわたるプログラムの中で5日の公募シンポジウム「気分障害に対する鍼治療の可能性 ~基礎と臨床、日本と世界の架け橋~」において、世界の鍼灸事情の紹介として「アメリカにおける精神科領域での鍼灸治療の現状について」が発表されました。

発表されたのは Associate Professor at Southwest Acupuncture College (USA) の 武田洋樹先生です。

武田先生は訪日の際に漢医堂に足を運んでくださるなど、アメリカにおける氣鍼医術の普及にもたいへんお力添えくださっています。

アメリカ「日本はり協会」指導者夏季合宿

武田先生の講演は会員限定ですのでブログ読者の皆様にご覧いただくわけにはいきませんが、そこで武田先生が強く訴えたかった主旨をテキストにまとめてくださいました。

現代の日本鍼灸の問題点、そして伝統鍼灸に携わる者が抱いているもどかしさが実に端的にまとめてあります。

問題点に気付いていらっしゃらない治療家の方も多いと思います。どうぞ目を通していただきますよう、お願いいたします。

葛野先生、講演を聞いていただきありがとうございました。

アメリカで活動をしていて常々感じていることを、この機会を借りて発表させていただきました。

鍼灸はアメリカでも世界でも注目を集めているものの、鍼灸=現代中国式+外科的西洋医学、と言う認識が不問の常識になっています。

今回は触れませんでしたが、医療に関する科学的アプローチの進歩進化は着実に進んでおり、鍼灸以外の物理療法では日本伝統鍼灸と同じレベルの生命現象に注目したものも多く出てきており、それに従った目覚ましい成果を上げているのは事実です。

アメリカにも個々の治療家に目を向ければ優れた技能を持った治療家はいると思いますが、全体としては、もし今のような形で鍼灸が使われていけば、近い将来、鍼灸はその成果の低さから医療としての地位を失う可能性もあると思っています。

講演でもお伝えしたドライニードリングのように、痛いところに針を刺して、反射を利用して筋肉を緩めたり痛みを感じにくくする程度のものとされる可能性も十分に考えられます。

実際に、中国式の鍼灸治療家は、痛み以外の症状には多くの場合、中医薬(日本で言う漢方薬)を用いることで成果を出しています

鍼灸だけであらゆる症状に対応すると言う構えで治療している治療家はごく少数派です。(研究レベルでは、パーキンソンなど様々な症状において有効性があるとされているものはありますが、誰がやっても同じ結果が出る再現性を前提とした研究で有効性が示されることと、実際に臨床で患者さんに選んで貰うレベルで成果が上がることとは別の次元の話です。)

葛野先生を始め、多くの日本鍼灸の先生方の臨床で日常的に実現されている治療成果が、実は、アメリカを始め世界の鍼灸界の常識では考えられないような高いレベルのもので、それはすなわち鍼灸の可能性を示す生きた証だと考えます。

そのことを世界に伝える事は、日本鍼灸が医療にもつ使命だと思っております。

現在、世の中は流れる方向が変わり、これから新しい段階に入り始めた思います。

いろいろな思惑が飛び交い雑音が多いですが、その中でも本質的なものはいつも変わりなく、真実を見極めながらそこに立脚し、ゆったりと生活を楽しんで参りたいと思っております。

武田先生、ありがとうございました。

ずっと抱いていたもどかしさを言葉にしていただいて、伝統鍼灸、氣鍼医術の素晴らしさをより強く訴えていけるとの思いに改めて至ることができました。

最後までお読みくださりありがとうございます。

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